2010/01/03

かがやく





朝、起きると枕元、布団の足元 あの小さな犬がいない

私12歳 あのこが0歳
長靴下のピッピがだいすきだった ピッピがいつも肩にのせていたニルソン氏という猿がうらやましくて
ちいさなリスザルを肩にのせる夢をみていた
中学の受験、うかったらおさるさん買ってあげよっか ママほんと?
勉強きらいだったから ひとの話きちんと聞かないで猿の事や新しい遊びのことばかり考えていたし 
成績は悪かった でも国語は異常に成績がよかった 塾をたちあげたチュウマン先生から家に電話がきたこともあった
受話器のむこうからは、賞賛の声がした  それ以外めっきり勉強でほめられた記憶はない
 
受験に合格  さるだ さるだ

ママと心はずませ車に乗り込んでついたのは 暗い動物の乳臭い匂いの立ちこめた部屋だった
やっぱり犬にしようよカリン と車中で言われて はずんでいた心は細い煙をあげて焦げおちた
薄暗い蛍光灯ひかる部屋には小さなもじゃもじゃの ちいさなよちよちのヨークシャーテリアが何匹か、10匹くらいか
目を宝石みたいにしてちりちり揺れていた

さるのことを忘れてはいなかったけれど、しょんぼり耳も目も垂れた、いかにも弱そうなおとなしそうな子犬が目にとまって
 このこがいい と言っていた  だけども、ペット屋もママも、こっちの子のほうが丈夫そう
といって
目がきりっとしていて 
一段とかがやいていて 
毛のいろつやのよい
負けん気の強そうな子をさした
私は気が強そうでいやだな、とおもった


数時間後、その目のつりあがってかがやいてる犬は家にきていた 家族になった
日曜日だった 名前はサンディーになった



よく遊んだ 学校に行く朝 遊んでいると勘違いしてサンディは 玄関から飛び出して、門につづく道沿いのちいさな河の縁に
挑戦的なポーズで にっこにこで お尻の先についた短い尻尾をくるくる振ってた 前足は揃えて地面につけて 後ろ足はぴんと立てて
おしりを突き出して 
だめ、おちちゃうよ と近づいたら、しめたとばかりに振り向いて河にダイブした 子犬の悲鳴 たぶん、肋骨が折れていた
でも数分後にはヘッチャラ顔でママにだっこされて私を見送っていた

散歩しようと外に出しても こわくて一歩も歩けなかった 海で100m置き去りにして歩き出さないか見ていたけれど
一歩も動かなかった だから外を好きになる様に、カバンに入れてよく外に連れて行った
こわいどころか
そのうち外が好きすぎて脱走もよくした 帰って来なかった日もあった 死ぬ程心配したけれど 無事保護されて
なんだか綺麗で良い匂いになってかえってきてた

マイロと喧嘩して目を片方なくした 家に買えると床が血まみれで マイロも血まみれで
サンディとママがいなくて 電話すると泣きじゃくるママ
手術で心臓が2回止まった でもサンディは帰って来た 

たくさんある 一緒に人生の半分以上も過ごした

数年前から咳をするようになった くるしそうにぜえぜえして どんどん咳の音が変わってゆくのをみていた
医者のホンダさんは、心臓の鼓動が弱って不規則になっている と4種類の薬を飲ませる様に言った
ビタミン、咳止め、心臓、利尿の薬 これからずっとになる、ともいっていた


何度もばたんと倒れてひっくりかえっておもらししていた 身体が硬直して倒れた
咳も嗚咽のようになった

おなかがぎゅるぎゅる鳴って 食欲をなくして ぜんぜん食べなくなった また薬を増やした

うそみたいに回復しては、またどんと調子を悪くして 何度も繰り返した

咳はなぜか出なくなっていた 薬をあげるのをやめた 調子はよさそうだった 足はもつれて倒れていた


大晦日の午前4時すぎに私は部屋にもどった いつものようにヒーターの前でお気に入りのカバンに入って寝ている
そっと撫でる あたたかい
動かない 

動かなかった。


声を上げて泣いた 寝ていた弟がきがついて 泣きながら1階におりて戻って来た
お線香を1本もって






一日中、側に居た 棺桶をつくって お花を沢山買って来て 沢山謝って 沢山お礼をいって
沢山お祈りした 仏壇に行って亡くなった祖父祖母叔父叔母に どうかそっちでかわいがってやって、と
なんべんも祈った 

それでも
朝おきると 枕元 足元でいつも寄り添って眠ったサンディをさがしている

私がきちんとお別れしないと 天国にとんでけないよね 丈夫で大きな羽をはやしてとんでいけ
とんでいって



いままでかわいがってくれた友人たち、預かってくれたももちゃん、ほんとうにありがとうございました。